2025.06.23|マテハン

自動倉庫とは?知っておきたい基礎知識と活用事例

昨今の物流現場では、人手不足や作業効率化の課題が多くの企業を悩ませています。「スペースを有効活用したい」「入出庫作業を自動化したい」などの声に応える解決策として、注目を集めているのが「自動倉庫」と呼ばれるマテハン機器です。 本記事では、自動倉庫の基本的な仕組みや種類、導入メリット、さらには活用事例までを詳しく解説します。 自動倉庫について初めて知る方にも、具体的な導入を検討中の方にも役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1.自動倉庫とは?

自動倉庫の定義と仕組み

自動倉庫とは、ラックへの入出庫作業を自動化したシステムを指します。

一般的に、地上数メートルから場合によっては数十メートルの高さにわたる大型のラックを構築し、その間をスタッカークレーンやシャトル台車が移動して入出庫を行います。

スタッカークレーンは水平方向の往復移動や垂直方向の昇降を行い、パレットやバケットなどを自動的にラックに出し入れする仕組みで、シャトル台車はラック内を走行する台車がパレットやバケットを搬送し、ラックに出し入れする仕組みです。

自動倉庫を導入することで、保管および入出庫作業を効率化し、作業時間の短縮や作業精度の向上、さらに省人化が可能となり、物流現場の生産性向上に大きく貢献します。

自動倉庫が注目される背景

近年、物流業界で自動倉庫が注目を集める背景には4つの主な理由があります。

1つ目は、深刻化する人手不足への対応です。少子高齢化により労働人口が減少し、物流現場での作業員確保が難しくなっており、自動倉庫は効率性の向上と省人化を実現する手段として期待されています。

2つ目は、限られたスペースの効率的な活用が求められるようになったことです。土地価格の高騰や倉庫用地確保の困難さが増す中、保管効率の最大化が求められており、自動倉庫による高密度保管が注目されています。

3つ目は、EC市場の拡大に伴う在庫管理の複雑化です。多品種少量の管理が求められる中、人力だけで迅速かつ正確な対応を行うのは限界があり、自動化による作業効率向上が不可欠となっています。

4つ目は、物流業務全体の自動化進展です。搬送や仕分けなどを含む倉庫作業の自動化が進む中、入庫から出庫、在庫管理までを一元的に担う自動倉庫は、次世代の物流を支える重要な設備として位置付けられています。

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2.自動倉庫の主な種類と特長

ここでは代表的な自動倉庫の種類を取り上げ、それぞれの特長について解説します。自社の物流ニーズに合わせ、最適な機種を選定しましょう。

●  パレット用自動倉庫(スタッカークレーン式)

パレットに積載された大型・重量物を自動で保管する仕組みで、4m程度から20m超までの多層ラックに対応可能です。製品を縦方向に収納することで、限られたスペースを有効活用できるのが特長で、工場や物流センターで広く利用されています。高い位置への入出庫もスタッカークレーンが自動で行うため、作業者の負担軽減につながります。また、冷蔵・冷凍環境や危険物保管にも対応可能なため、多業種での効率化が期待できます。

●  パレット用自動倉庫(ビル式)

ビル式自動倉庫は、倉庫建屋とパレット用保管ラックを一体化した構造を持つ自動倉庫です。通常の倉庫が鉄骨などを使用した建築物であるのに対し、ビル式自動倉庫は保管ラックそのものが建物の骨組みとして機能します。高さ30m級の多層構造に対応できるため、限られた設置面積で大量の在庫を保管することが可能です。建屋とラックを一体化することで倉庫の全体コスト低減、スペース当りの保管効率の向上につながります。

●  バケット用自動倉庫(スタッカークレーン式)

小物や多品種の商品を効率的に管理する用途に適しており、スタッカークレーンがバケットに収納された荷物を入出庫します。SKU(在庫品目数)の多い現場で保管・入出庫作業に加えピッキングや在庫管理の手間を大幅に削減できるのが特長です。

●  バケット用自動倉庫(シャトル台車式)

シャトル台車式自動倉庫は、スペース効率を最大化し、高速かつ正確な入出庫を実現する先進的な物流システムです。シャトル台車が棚内を移動し、ケースやコンテナを搬送することで、より高い収納密度を可能にします。幅広い業界に対応可能で、システムの設計や拡張が柔軟に行えるため、将来的な需要増加にも対応可能です。省スペース・高速対応・効率化を追求する物流現場を支えます。

●  ACR(Autonomous Case-handling Robot)システム

ACRシステムは、自律走行機能を持つロボット(ACR)がケースや箱の搬送・ピッキングを自動化し、効率化を実現する先進的なシステムです。スリムな設計で通路幅を最小化し、スペースを有効活用できるほか、高層ラックとの組み合わせで保管効率も向上。作業の自動化により、人手を大幅に減らせるため、人件費の削減とともに作業者の負担軽減を実現します。また、業務量の変動にも柔軟に対応可能で、必要に応じたシステム拡張も容易です。物流の自動化を推進する重要な技術として注目されています。

●  垂直回転棚

垂直方向に配置された棚が回転し、作業者の前の取り出し口まで自動で商品を運んでくる省スペース型ストレージです。垂直に収納することで床面積を削減でき、空間を最大限に活かした高密度の保管が可能です。小物部品や工具・部材を整理して保管したい現場に適しており、誤った取り出し防止や在庫精度向上にも貢献します。

これらの自動倉庫は、それぞれ保管対象や特性が異なるため、自社の物流要件に応じたタイプを選ぶことが重要です。多様な物流ニーズに応じた自動倉庫は、業務効率だけでなく、安全性や柔軟性向上の観点からも、今後ますます欠かせない存在になるでしょう。

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3.自動倉庫導入のメリット・デメリット

メリット

●  保管効率の向上・省スペース化

自動倉庫の最大の強みは、保管効率の向上と省スペース化です。ラックを高く積み上げて上部空間を活用することで、平置き段積みの数倍の保管量を確保することが可能です。また、入出庫作業のためにフォークリフトや人の通路を確保する必要がなく、高密度の保管を実現します。こうした効率的なスペース利用によって、土地コストの削減にも寄与します。

●  生産性向上と省人化の実現

入出庫作業の自動化により、作業に関わる人員の省人化を図ることができ、従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、モチベーションや効率が向上します。また、出荷ピーク時でも安定した処理能力を維持できるとともに、作業者の熟練度に左右されないため、作業品質が均一化されます。誰でも高品質な作業を簡単に行える効率的な環境が整うことは、物流現場にとって大きなメリットになります。

●  労働力不足の解消と人件費の削減

少子高齢化が進む中、物流業界では慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。自動倉庫の導入により、少人数でも効率的な保管・入出庫作業が可能になり、人件費削減につながります。また、重量物の荷役・搬送や高所作業の削減により、作業者の安全性を確保することが可能です。加えて、自動倉庫は −30 ℃級の冷凍・冷蔵倉庫や防爆エリアなど特殊環境にも対応可能なため、人が作業しにくい現場でも安全かつ安定した稼働が行えます。

●  在庫管理精度の向上

自動倉庫とあわせてWMS(倉庫管理システム)を活用することで、全てのロケーションを一元管理でき、欠品や誤出荷のリスクを大幅に低減できます。また、バーコードやRFIDとの連携によりリアルタイムで正確な在庫状況を把握でき、棚卸し作業の工数も削減可能です。

デメリット

●  初期投資費用と導入ハードル

自動倉庫のデメリットの一つは、導入コストが高額になりやすい点です。システム設計や機器、設置工事などにより、費用が数千万円から数億円規模に達することもあります。また、専門知識が必要となるため、既存の業務プロセスや施設に合わせた設計が求められる点もハードルとなります。そのため、導入には信頼できるパートナー選びが重要です。自動倉庫の導入をご検討の際は、豊富な実績を持つトヨタL&Fへぜひお問い合わせください。

●  柔軟性の制約とレイアウト変更コスト

自動倉庫は効率化や省人化に優れる一方、柔軟性に欠ける側面があります。設計時点での運用条件が固定化されるため、品目や荷姿、取扱量が変化した場合、システムの適応が難しいことがあります。また、レイアウト変更を伴う改善には高額なコストが必要となり、事業環境の変化に対応する柔軟性が乏しいといえます。そのため導入の際には、長期的な運用計画や変化への対策を十分に検討する必要があります。

●  運用・保守にかかるコストと業務停止リスク

自動倉庫は物流現場の効率化を大きく向上させる一方、定期点検や修理が必要で、メンテナンスコストが発生します。また、自動倉庫の稼働停止は、業務の遅延や顧客満足度の低下につながるリスクも存在します。これに対し、トヨタL&Fは専任のメンテナンススタッフによる定期点検と迅速なサポート体制を構築。稼働停止リスクを軽減し、安定した運用を支援する仕組みを提供しています。

4.自動倉庫導入の進め方

自動倉庫の導入を成功させるためには、事前準備をしっかりと行い、初期検討から本格稼働までのプロセスを計画的に進めることが重要です。以下では、導入の進め方を解説します。

Step1:要件定義~基本設計
Step2:詳細設計~製造
Step3:据付~調整
Step4:本稼働~運用評価

Step1:要件定義~基本設計

自動倉庫導入の第一歩は、目的や課題に基づいた要件定義です。例えば、「労働力不足を解消したい」「入出庫の処理能力を向上させたい」など、具体的な改善目標を設定し、優先順位を明確にします。次に、「収納する商品や数量」、「作業フロー」、「既存システムとの連携」などを詳細に整理し、現場スタッフのニーズを把握します。これをもとに、自動倉庫の概略仕様や配置を計画し、基本設計を進めます。この段階では、システム構成や導入後の運用方法を具体化することが重要です。基本設計を綿密に行うことで、後工程のスムーズな遂行と導入効果の最大化につながります。

Step2:詳細設計~製造

基本設計をもとに、詳細設計を行います。具体的には機器のサイズやレイアウト、動作仕様、ソフトウェアとの連携条件を細かく設計します。作業環境や安全性も考慮しつつ、実現可能なモデルを構築します。設計が完了したら、機器やシステムの製造を開始します。

Step3:据付~調整

製造された機器やシステムを現場に設置します。大掛かりな作業となるため、安全管理や作業計画が重要です。その後、動作確認や調整を行い、現場の条件に合わせて最適化を図ります。試運転やテストを通じて稼働状況を確認し、必要に応じて調整を行います。この段階で問題をクリアすることが、本稼働をスムーズに進めるポイントです。

Step4:本稼働~運用評価

調整が完了したら、いよいよ本稼働開始です。導入目的に沿った運用が実現しているかを確認し、現場スタッフへの運用トレーニングも併せて実施します。本稼働後も定期的に評価を行い、導入後の効果や課題を確認して改善を続けます。また、システムの安定性やメンテナンス計画の策定も重要です。本稼働後も継続的に評価を行うことで、自動倉庫の導入効果を最大限に高めることができます。

5.自動倉庫の操作に必要な資格・法令手続き・法定検査

スタッカークレーン式自動倉庫では、安全性を確保するために、法令手続き、操作資格の取得、法定検査の実施が義務付けられています。設置時には、吊り上げ荷重の大きさに応じて、労働基準監督署への「クレーン設置報告書」提出や「クレーン設置届・落成検査」への対応が義務化されています。スタッカークレーンの操作は、吊り上げ荷重の大きさに応じた「特別教育の受講者」や「免許保持者」に限定されています。また、自主検査として「作業開始前の日常点検、月次点検、年次点検、地震後の点検」を実施して「点検結果を記録」する義務があり、異常が認められた場合には直ちに補修対応をしなければいけません。これらの対応は、従業員の安全を確保し、企業の信頼性向上にも貢献します。

6.自動倉庫の地震対策

自動倉庫における地震対策は、効率的な運用と安全性を確保する上で重要です。ラックに制振構造を採用することで、ラックの揺れをダンパーで吸収し耐震性を向上させることができます。また、棚にはパレットのずれを防ぐための防止材を設置し、荷物についてはストレッチフィルムで包装することで荷崩れを防止します。さらに、地震検知センサを導入すると、地震の揺れを感知した際に機器を自動停止させ、被害を最小限に抑えることが可能です。これらの対策により、安全性が高く信頼性のある倉庫運営を実現します。

7.導入事例で見る自動倉庫の効果

実際に自動倉庫を導入すると、どのような成果が得られるのでしょうか。
トヨタL&Fには自動倉庫の導入実績が多数あります。ここでは一部の事例をご紹介します。

株式会社サクラクレパス様(業種:文具製造業)

将来の物流量増加や事業拡大を見据え、保管能力の増強とオペレーションの効率化を実現する新しい物流センターを構築。

<導入商品>
パレット用自動倉庫(ビル式)、バケット用自動倉庫(スタッカークレーン式/サイドピッキング仕様)、垂直回転棚ほか

<導入効果>
・約8,000パレットを格納するパレット用自動倉庫ラックソーターPとサイドピッキング自動倉庫の導入により、作業の効率化を実現
・出荷頻度に合わせた保管・ピッキング体制を確立し、生産性の向上を実現
・WMS(倉庫管理システム)の刷新により、オペレーションの効率化と管理体制の強化を実現

▶関連ページ:株式会社サクラクレパス様導入事例はこちら

日幸産業運輸株式会社様(業種:運輸・倉庫)

冷凍倉庫にパレット用自動倉庫ラックソーターPを導入し、入出庫作業を自動化。

<導入商品>
パレット用自動倉庫(スタッカークレーン式/冷凍仕様)ほか

<導入効果>
・冷凍倉庫内でのフォークリフト作業が削減され、作業者負担が大幅に軽減
・1つのバッチの実行で複数パレットの自動出庫が可能となり作業効率が向上
・ベテラン作業者以外でも入出庫が行える作業の標準化を実現

▶関連ページ:日幸産業運輸株式会社様導入事例はこちら

DMG森精機株式会社様(業種:電気・機械)

4種類の自動倉庫とトヨタWMSの導入で、12万品目の効率的な保管・入出庫を実現。24時間以内パーツ発送率95%を継続的に実現。

<導入内容>
パレット用自動倉庫(スタッカークレーン式)、バケット用自動倉庫(スタッカークレーン式)、大型長尺用自動倉庫、小型長尺用自動倉庫ほか

<導入効果>
・4種類の自動倉庫で、サイズに応じた最適な保管・入出庫を実現
・荷姿別保管と立体保管の採用により、容積率が約1.5倍に向上
・トヨタWMSの導入により、出荷リードタイムの短縮を実現

▶関連ページ:DMG森精機株式会社様導入事例はこちら

三和パッキング工業株式会社様(業種:自動車・輸送機器)

材料・完成品の入出庫や工場棟と倉庫棟間の搬送作業を自動化し、省人化を実現。

<導入内容>
パレット用自動倉庫(スタッカークレーン式)、AGF(無人フォークリフト

<導入効果>
・自動倉庫導入により、保管量が4倍に増大するとともに、在庫管理を効率化
・AGFと自動倉庫は同一スタッフによるアフターサービスで安心感向上

▶関連ページ:三和パッキング工業株式会社様導入事例はこちら

しおざわ農業協同組合様(業種:農業・水産)

集出荷施設へのビル式自動倉庫の導入で、南魚沼産米のブランド強化に貢献。

<導入内容>
パレット用自動倉庫(ビル式)

<導入効果>
・荷の積み上げ作業の廃止による省人化と品質劣化の防止
・製品情報と検査情報の一元管理の実現

▶関連ページ:しおざわ農業協同組合様様事例はこちら

トヨタモビリティパーツ株式会社様(業種:小売・通販・卸売 / 自動車・輸送機器)

バケット用自動倉庫の導入で、作業者の労働環境改善を実現。

<導入内容>
バケット用自動倉庫(スタッカークレーン式)

<導入効果>
・入出庫作業の自動化により、重筋作業を削減し、性別・年齢を問わない作業が可能に
・歩行のムダを削減し、作業効率の向上を実現
・柔軟な在庫管理システムのカスタマイズで、正確かつ高効率な入出庫作業を実現

▶関連ページ:トヨタモビリティパーツ株式会社様の導入事例はこちら

無量寿山 光明寺 沖縄別院 琉球識名院様(業種:寺院)

自動搬送式納骨堂を備えた、琉球様式と和の伝統技術を調和させた美しい寺院を建立。

<導入内容>
バケット用自動倉庫(スタッカークレーン式/納骨堂)

<導入効果>
・永きにわたる使用に耐える体制が整えられた自動搬送式納骨堂
・地域の皆様に愛され続けるための高い耐久性と、美しさを兼ね備えた建築設計
・建築設計から許可申請、機器選定、施工、運用までをトヨタL&Fが一括管理

▶関連ページ:無量寿山 光明寺 沖縄別院 琉球識名院様様導入事例はこちら

8.まとめ

人手不足対策や保管効率の向上、在庫管理精度の向上が求められる中、自動倉庫は工場・倉庫内の保管および入出庫作業において大きな効果を発揮します。

高い保管効率の実現、作業効率・在庫精度の向上など、多くのメリットを備える一方で、大きな初期投資やレイアウト変更の制約、運用・保守にかかるコストなど、導入前に検討すべき事項が存在します。

トヨタL&Fでは、導入前のヒアリングや現地調査からシミュレーション、設計導入、導入後のサービス対応までワンストップで提供しています。自動倉庫に興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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